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yhirose 2015-08-12 22:28:29 -04:00
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@ -58,9 +58,9 @@ g++ 5.1でもほとんど同じで,
Visual C++ 14 (Visual Studio 2015) では,
cl -DUNICODE /EHsc hello.cc
cl /EHsc hello.cc
とするとコンパイルできました
とするだけでコンパイルできます
では生成された実行ファイルを実行してみましょう。画面に`>`が表示されユーザーに入力を促します。何か文字列を入力してリターンキーを押してみましょう。正確に「hello world!」と入力すると「OK」と表示されます。何かおかしな入力をすると「NG」になります。

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@ -96,13 +96,59 @@ NL <- '\r\n' / '\r' / '\n'
無事CSVフォーマットの文法が完成です。BNFや正規表現に慣れている方は親近感を感じたのではないでしょうか
ここでPEGで文法を定義する際によく直面する問題について考慮しましょう。これは構文解析と字句解析が一緒に行われるPEG特有の問題です。
ここでPEGで文法を定義する際によく直面する問題について考慮しましょう。
## 空白の除去
## キーワードの処理
PEGの問題の中で一番よく知られているのは「空白」扱いです。YaccなどではLexなど外部の字句解析器がテキストのトークン分割を行う際に不必要な空白を除去してくれます。PEGでは構文解析と字句解析が明確に分離されていないため空白除去の処理も通常の構文規則を用いて行う必要があります。
`[123,456,789]`のような数字の配列は,次のように定義できます。
次章では,より複雑なスクリプト言語の文法デザインしてみましょう。
ARRAY <- '[' (NUM (',' NUM)*)? ']'
NUM <- [0-9]+
しかし括弧やカンマの前後に任意の空白文字を許したい場合は,明示的にその規則を追加する必要があります。
START <- _ ARRAY
ARRAY <- '[' _ (NUM (',' _ NUM)*)? ']' _
NUM <- [0-9]+ _
_ <- [ \t\r\n]*
`_`が空白規則で,開始規則の先頭と,括弧やカンマや数字などのトークンの直後にこの規則を指定しています。
このようにPEGでは字句解析器を別途用意する必要はありませんが自前で空白除去の規則を適切に散りばめなければならずこの点がPEGの弱点と言えるかもしれません。
## 空白の間違った扱い
`if x then y`でも`if(x)then y`でも記述可能なプログラミング言語の文法を考えてみましょう。
IF <- 'if' _ ('(' _)? IDENT (')' _)? 'then' _ EXPR
IDENT <- [a-zA-Z][a-zA-Z0-9_-]* _
...
_ <- [ \t\r\n]* # 空白文字が0回以上
この文法で上の2つの例にマッチさせることができますが`ifxtheny`にも誤ってマッチしてしまいます。トークン間に必ず空白が必要ということで'_'の規則を次のように変更してみます。
_ <- [ \t\r\n]+ # 空白文字が1回以上
今度は正しく`ifxtheny`がエラーとなります。しかし`if(x)then y`は空白を必要ないにもかかわらず,マッチしなくなってしまいました。こうした時は「否定先読み」を使用して,トークンの切れ目を明確にして解決することができます。
IF <- 'if' __ ('(' _)? IDENT (')' _)? 'then' __ EXPR
IDENT <- [a-zA-Z][a-zA-Z0-9_-]* __
...
__ <- ![a-zA-Z0-9_-] _
_ <- [ \t\r\n]*
`__`は,前のトークンの直後の文字が「名前文字`[a-zA-Z0-9_-]`」ではないことを確認しつつ0回以上の空白文字を受け入れます。
## Unicodeのサポート
FordのPEGの論文ではUnicode文字については想定されていません。しかし多言語のテキストを扱うにはUnicodeのサポートが必須です。対応は処理系によってまちまちです。
この本で使用するPEGライブラリcpp-peglibは正式にはUnicodeに未対応ですが問題なくUTF8のテキストを扱うことができます。U+0800以上の全ての文字を規則名として使用することができます。
このように幾つかの弱点はあるもののPEGは十分に実用的な文法定義のための言語です。
次章では,ついにスクリプト言語の文法デザインに着手しましょう。
[Link_Ford]: http://pdos.csail.mit.edu/papers/parsing:popl04.pdf